研究概要 |
1)α-シヌクレイン遺伝子をHEK293細胞、およびPC12細胞に導入しタンパク質リン酸化反応について解析した。パルス-チェイス実験において、α-シヌクレインは両細胞中でリン酸化されることを明らかにした。これらのリン酸化反応は、オカダ酸により非常に安定化されたことから、ホスファターゼに対し感受性が著しく高いことが示された。主リン酸化部位はSer129で、他にSer87へのリン酸基の取り込みも認められた。Ser129のリン酸化はcasein kinase1,2が関与していることも明らかにした。これらの結果は、α-シヌクレインの機能がリン酸化反応によって制御されている可能性を示唆するものである。 2)これまで、α-およびβ-シヌクレインが中枢神経系では、前シナプスに存在していることが証明されているが、β-シヌクレインがヒト正常アストロサイトにも発現していることを初めて明らかにした。 3)両生類、爬虫類の中枢神経系におけるシヌクレインファミリー遺伝子について解析した。動物はウシガエル、アオダイショウを用い、大脳からcDNAライブラリーを作製した。プローブにヒトβ-シヌクレインのドメインIを用いてスクリーニングした結果、アオダイショウから10個の陽性クローンを得た。現在塩基配列を解析中である。 4)酵母を用いたTwo-Hybrid法により、β-シヌクレイン結合タンパク質の解析を行い、結合タンパク質として、14-3-3θ、メタロチオネイン2Aを同定した。ラット大脳の細胞抽出液を試料に用いて、免疫沈降-イムノブロツト実験を行い、両タンパク質がβ-シヌクレインと生理的条件下で結合することを証明した。また、メタロチオネイン3の結合も明らかにした。野性型α-シヌクレイン、および変異シヌクレインA30P, A53Tについても現在解析中である。 4)Cre-loxPシステムを用いて、シヌクレインタンパク質の部位特異的高発現マウスの作製を試みた。種々の発現ベクターを構築し、(1)Cre-donorマウスとして、CaMkII promotor-Cre(海馬)、GFAP promotor-Cre(アストロサイト)、Pgk2 promotor-Cre(精巣)、CAG promotor-Cre(全身)、Keratin14 promotor-Cre(皮膚)および(2)Cre-acceptorマウスとして、LNL-α-Syn、LNL-β-Syn Tgマウスを作製した。
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