研究概要 |
ATP依存的な異物排出ポンプ・P-糖蛋白質(P-gp)は、種々の代謝酵素、特にCYP3A分子種と共に、生体の解毒・防御機構として重要な役割を担っている。これら両機能蛋白質は、消化管、肝、腎、眼あるいは脳などにおいて発現しており、異物侵入(吸収)の制限、排出の促進、あるいは代謝解毒により、異物の組織(細胞内)蓄積を低減する働きを有している。 本研究では種々外因性内分泌かく乱物質のP-gp/CYP3Aに及ぼす影響についてin vitroおよびin vivoで検討した。 (1)細胞実験において、bisphenol-A, tributyltin,およびgenisteinは、内因性エストロゲンであるestradiolやprogesterone,および合成エストロゲンhexesterol同様、P-gp活性を有意に阻害した。またgenisteinの膜輸送にP-gpが関与することが示唆された。 (2)Estradiolあるいはtamoxifen(エストロゲン受容体の結合阻害剤)を新生児期のラットに投与した場合、思春期(8週齢)の性器重量は雌雄ラット共に低下した。 (3)肝P-gp発現と活性、および肝CYP3A活性に明らかな性差が認められた。 P-gp:雌>雄、CYP3A:雄>雌。 (4)Estradiolの新生児期暴露により、思春期の肝CYP3A活性は特に雌で有意に増大した。 (5)Tamoxifenの新生児期暴露により、思春期の肝P-gpの発現・活性は特に雌で有意に増大した。 これらの知見は、特に幼児期の各種内分泌かく乱物質の暴露は、P-gpやCYP3Aなど生体防御機構に重篤な影響を与える可能性があることを示唆するものである。
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