デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)遺伝子の異常の70%は複数のエクソンをも含む大きな欠失であり、マルチプレックスPCR法による診断も可能であるが、診断率は十分とはいえず、新たな方法の開発が望まれてきた。本研究ではDNAマイクロアレーを用いたエクソンの欠失、スプライス異常の検出を試みた。 DNAマイクロアレーは日本レーザのGTMASSスタンピング装置を用い、ポリLリジンコートのスライドグラス上にジストロフィン遺伝子のすべての翻訳エクソンを増幅したDNA断片を固定した。ターゲットDNAは、正常およびDMD患者のリンパ芽球のtotalRNAからジストロフィンmRNAの翻訳領域を10分割してRT-PCRをおこない、増幅した。PCR時にCy5dUTPを取り込ませることで、ターゲットDNAはCy5標識している。ハイブリダイゼーションは複数の蛍光標識ターゲットcDNAを混合し、各エクソンを固定したスライドグラスと共にインキュベーションすることで行った。 正常リンパ芽球のcDNAのフラグメント7はエクソン43から51を含んでいるが、これをマイクロアレーに対しハイブリダイゼーションを行うとエクソン43から51までのエクソンのスポットの蛍光が認められた。一方、マルチプレックスPCRにて、既にエクソン44の欠失が疑われていた患者のDNA断片について同様の実験を行うと、エクソン44に相当する蛍光スポットのみの蛍光が検出されないことが分かった。この結果から、本DNAマイクロアレーはDMDの遺伝子診断法として利用可能であることが示唆された。 一方、オリゴヌクレオチドをスライドグラスに結合させ、アリル特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション法を試みたが、蛍光標識DNAが検出できるほどの感度にオリゴヌクレオチドのガラス面への結合ができず、1塩基の変化の検出には今後の更なる条件検討が必要と思われた。
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