研究概要 |
DNAマイクロチップは、細胞に発現する数千の遺伝子を一度に解析する目的で、すでに開発され、現在ガンや細胞周期などに関連する遺伝子をクローニングする手段に用いられているが、遺伝子異常の検出に関しては報告されていない。本研究では、骨粗鬆症に連鎖した遺伝子多型の検出系をモデルに、DNAマイクロチップを用いた多次元遺伝子多型解析法の開発を行った。骨粗鬆症関連遺伝子(VDR,estrogen receptor,collagen type l)において、多型を示すDNA断片を合成した。この際、多型を示す部位が、認識されやすいように、前後に新規の配列を挿入した。これらの新規配列は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いたハイブリダイゼーションにより特異的な増幅が可能になるように設計した。さらにゲノムDNAの細胞断化と、特異的プライマーの設計および増幅能の開発も行った。新規配列プローブは増幅プライマーを考慮しデザインされ、片方の3'末端にはドナー蛍光色素を標識し、その隣接のプローブの5'末端にはアクセプター蛍光色素を標識した。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)は、二つのプローブが近接して増幅産物にハイブリダイズした場合のみ生じる。このエネルギーの移動は、二つのプローブが近接して増幅物にハイブリダイズした場合にのみ起こることより、アクセプター蛍光色素は異なる波長の光を発し、このFRETシグナル量はハイブリダイゼーション可能な特異的なDNA産物を反映する。よって、遺伝子多型を示す部位の検出に特異的なプライマーのラベルおよび設計法と考えられた。しかしながら、プラスミドDNAでは極めて良好な結果が得られるのに比べ、ゲノムDNAを用いて骨粗鬆症患者100名のVDR翻訳開始店およびプロモーター部位における遺伝子多型を解析したが、良好な結果がえられず、さらなる検討が必要と判定された。問題は、アクセプター蛍光色素ラベルにあり、非特異的なバンドしか得られなかった。今後、FRET用いたより正確なプライマー設計を行い、本法をより感度の高いものに改良する予定である。
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