研究課題/領域番号 |
11557205
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
登 勉 三重大学, 医学部, 教授 (60106995)
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研究分担者 |
長田 寛 中外製薬(株), 創薬第二研究所, 主任研究員
堀 浩樹 三重大学, 医学部・附属病院, 講師 (40252366)
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キーワード | MTAP / Taqman PCR / MTAPプロモーター / メチル化 |
研究概要 |
病気の原因が遺伝子レベルで議論される時代となり、癌の病態解明も遺伝子・分子を対象に進められている。正常細胞との違いを標的にした分子標的治療が臨床に応用されつつある。本研究で計画した癌細胞に特異的なプリン代謝酵素欠損を標的とする治療法も、分子標的療法の一つと位置付けられる。 さて、正常細胞と癌細胞での核酸代謝における違いを利用した選択的化学療法には、プリン代謝酵素であるMethyl thioadenosine phosphorylase(MTAP)欠損の正確な診断が不可欠である。我々は、MTAP酵素欠損細胞株を用いてMTAP遺伝子の構造解析を行い、1例を除く全例で遺伝子欠失がMTAP酵素欠損の原因であり、しかも常に3'末端の第8エクソンが消失していることを発見した。この成果を基に、3番染色体長腕に存在するMTAP偽遺伝子をコントロールに用いたReal-time PCRによる遺伝子診断法を開発した。この方法を用いてAdult T-cell leukemia(ATL)患者検体を検討したところ、末梢血液中の白血病細胞が30%以上であれば正確にホモ接合性欠失が診断できることを証明した。また、遺伝子欠失の無いMTAP酵素欠損細胞を詳細に検討したところ、脱メチル化剤による処理で、MTAP mRNA発現が回復することが確認され、プロモーター領域のメチル化によって転写が阻害されていることがわかった。このことは、酵素欠損が、遺伝子欠失以外の機序に因っても起こることを示しており、MTAP酵素タンパク質の有無を調べる免疫組織染色法の開発が進行中である。 一方、プリン代謝の違いを標的にした化学療法は、臨床応用に耐えうる抗プリン代謝拮抗剤の開発を待たねばならないが、坦癌マウスでの実験に使用したL-alanosineは、MTAP酵素欠損癌に対する臨床治験薬の候補と考えられる。
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