従来、興奮収縮連関に直接関与する筋細胞内膜系の可視化は非常に困難であったが、我々が開発した方法により簡便に可視化することが可能となり、筋細胞内での配列が詳細に観察できるようになった。しかし、筋細胞内膜系及びカルシウム(Ca^<2+>)チャンネルの形態観察の大部分は、電子顕微鏡により2次元的(平面的)に行う方法であり、元来立体構造を有する筋細胞内での具体的配列・配置に関しての理解は非常に困難である。また、従来の顕微鏡観察の方法では蛋白質の変性を防ぐための処理により筋細胞は「動く」機能を失っており、細胞機能の理解は困難を伴う。本研究では、各種顕微鏡を用いて興奮収縮連関に関与する内膜系及びCa^<2+>チャンネルを可視化し、これらのデータを画像処理することにより、それらの3次元(立体的)モデルを構築することを目的として実験を行った。安静時並びに筋収縮時における筋細胞内膜系をCa^<2+>-K_3Fe(CN)_6法により可視化し、0.35μmの連続切片を作製して加速電圧100〜200KVで電子顕微鏡により観察した。筋細胞内膜系の中でも、特に横行小管(T管)系は筋収縮時にその配列の乱れが観察された。哺乳類骨格筋細胞の場合、A-Iジャンクション上において横断方向に位置するtriadについても筋収縮時には、Z線方向へ移動する傾向が観察された。サルコメア長とtriad-Z線間の距離については有意な正の相関関係が認められた。この傾向は特に筋細胞内膜系が顕著に発達している速筋線維において顕著であった。筋細胞内膜系の中で、筋小胞体(SR)については筋収縮時における構造及び位置の変化は観察されなかった。その他の細胞内微細器官については、筋収縮に伴う構造上の変化及び筋細胞内における位置の変化は観察されなかった。
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