研究概要 |
平成14年度交付申請書に記載した「研究目的・研究実施計画」に従って実施した.特に本年度は,本研究の最終年度にあたっている.研究の目的・計画にそって得られた知見等は次のとおりである.その一部は,「11.研究発表欄」に記載した論文等(2002年以降)においてすでに発表した.本欄の肥田,三宅以外の著者名は本研究の協力者であり,発表においては肥田,三宅のいずれかが共同発表者として含まれている. 1.六郷扇状地の野中および湯川のピエゾメータ(各20,50,100m深)および扇状地の観測井から得られた観測値に基づいて,各種の地下水解析やシミュレーションを行った結果,本研究の課題:「地下水人工涵養と地下水位変動」の制御システムはほぼ確立されたといってよい. 2.扇状地の中央に地下水人工涵養池とピエゾメータ(各20,50,100m深)を置いて人工涵養と地下水堆形成の実験を繰り返した.その結果,扇状地の中央のピエゾメータの記録をもって,特に地下水を多用している扇状地の末端域の地下水位変動の「予報」を出す方法が確立された. 3.今研究の成果はすでに社会に還元されている.すなわち,六郷町は,上の成果に基づいて町の行政に地下水人工涵養の方法を取り入れ,扇央部に地下水人工涵養池をこれまでに4か所にわたって設置し,地下水資源,地下水環境の保全に活用している. 4.これらの成果を「第3回世界水フォーラム,2003,Kyoto/osaka」において「Artificial re-charge system for aquifer in the Rokugo alluvial fan covered with paddy field, Northern Japan」(Hida, N.)と題して発表,世界にむけて発信する. 5.安原ほかの研究協力者は,地下水,湧水等,扇状地の水の安定同位体比(酸素,水素,炭素)の分析を行い,その結果に基づいて,六郷扇状地の地下水の起源をほぼ解明した. 6.今後の研究の課題:(1)日本の国土を代表する扇状地において地下水人工涵養の方法をさらに普遍的に活用する方法を開発する.(2)そのために,扇状地の地下水循環の特性を活かし,扇端の湧水を集め,それを扇央に送水して人工涵養の水源に当てるシステムを確立したい.(3)これまでの成果を水危機を来している世界の各地に普及させることを目指したい.
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