食品タンパク質を低イオン強度下で加熱して得られる可溶性凝集体は様々な機能を有する。加熱に伴い分子表面に露出すると思われる疎水性アミノ酸残基類が疎水的相互作用で結合を促し、次いでジスルフィド結合が分子間に形成されて、凝集体に至るが、その部位や特異性、凝集体形成におけるタンパク質分子間の相互作用機構は明確化されていない。可溶性凝集体を成分とする食品タンパク質の物性に最も大きく影響するのは、可溶性凝集体のサイズと形状である。そこで、タンパク質分子のどの個所が、どのように結合するのか、加熱条件;温度、pHや塩濃度などの溶媒条件を変えた場合、それらはどのように変化するのか、それとも変化しないのかについて検討した。乳清タンパク質の主要タンパク質であるβラクトグロブリンについて、加熱に伴う凝集体のサイズ、形状をタンパク質化学の手法により解析した。また、遺伝子組み換え体を調製し、部位特異的変異を入れた変異体を用いて、加熱凝集に関わるアミノ酸残基を同定するため、大腸菌、酵母にβラクトグロブリン遺伝子を組み込むことに成功し、組み換え体の製造、アミノ酸残基に置換体の調製を行なった。
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