研究課題/領域番号 |
11558009
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研究機関 | 東京国立文化財研究所 |
研究代表者 |
石崎 武志 東京国立文化財研究所, 保存科学部・物理研究室, 室長 (80212877)
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研究分担者 |
川野邊 渉 東京国立文化財研究所, 修復技術部, 室長 (00169749)
青木 繁夫 東京国立文化財研究所, 修復技術部, 室長 (60088797)
三浦 定俊 東京国立文化財研究所, 保存科学部, 部長 (50099925)
小林 幸雄 北海道開拓記念館, 学芸主査(研究職) (10113466)
土谷 富士夫 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (30003130)
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キーワード | 石造文化財 / レンガ建造物 / 凍結劣化 / 凍上現象 / 氷晶析出 / 凍上実験装置 / 築地塀 |
研究概要 |
1.本年度も昨年度に引き続き北海道開拓の村の歴史的建造物周囲の気象観測を継続して行った。また、建造物の漆喰壁、石壁の水分量をTDR水分計と赤外線水分計を用いて測定し、季節による水分分布の変化を調べた。また、帯広のレンガ造サイロの含水率を、TDR、赤外線水分計による測定に加えて電気探査による水分量の測定を行い、それぞれの測定方法により得られたデータの比較を行った。それぞれの方法により得られたデータには、良い対応が見られた。 2.北海道開拓の村の歴史的建造物の漆喰壁が、春先に崩れ落ちるという事例があった。この漆喰壁の剥離の原因は、土壁の凍結、融解による劣化が原因であると考えられたため、日本壁の凍結実験を行った。日本壁の代表的な構造は、表層から、漆喰の上塗り、粘性土にすさと砂分を混ぜた中塗り、粘性土とすさを混ぜた荒壁からなっている。この中塗り土と荒壁土の様々な含水比条件下での凍結温度、凍上特性、凍結融解による劣化状況を調べる試験をおこなった。この実験に加えて、それぞれの土の水分特性を測定するために、サイクロメータを用いて、土試料の水分ポテンシャル測定を行った。実験結果から、土は、6%程度の含水比があれば凍結するが、凍上現象が起こり氷晶の析出によりクラックが入るためには、20%程度の含水率が必要なことが分かった。また、平衡状態では、中塗り土の含水比が、荒壁土の含水比の半分程度になること、また、中塗り土の方が荒壁土より凍上性が低いことなどが分かった。これらの理由により、日本壁の構造は、乾燥に強いだけではなく、凍結にも強い理にかなったものになっていることが分かった。また、土壁中の含水比がある臨界値より大きくなると急激に凍上現象による劣化が進むことが分かった。 3.本研究課題に関して、「寒冷地の石造文化財、歴史的建造物の劣化と保存」というタイトルで、北海道開拓の村において研究会を開催した。本研究会では、寒冷地における漆喰壁の劣化、史跡志波城での熱と水分量の経時変化測定、北海道開拓の村の石造建造物、帯広のレンガ造りサイロの含水比、比抵抗、温度分布などの研究発表があり、本研究課題に関しての活発な討論を行った。今後とも、本研究課題に関しては、幅広い研究者間の情報交換を行いながら、研究を進めていく予定である。
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