研究分担者 |
朝廣 雄一 九州大学, 大学院・システム情報科学研究院, 助手 (40304761)
鈴木 昌和 九州大学, 大学院・数理学研究院, 教授 (20112302)
静谷 啓樹 東北大学, 情報シナジーセンター, 教授 (50196383)
酒井 康行 三菱電機(株), 情報総合研究所, 主任研究員
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研究概要 |
最終年度である今年度は、研究成果の論文発表、およびプロジェクトの反省・今後の課題を検討した。 今回の研究でも試みたものに楕円曲線群と超楕円曲線のヤコビ多様体群との間に写像を構成することで、両者の安全性の相対比較を行うことがあった。この方向では大きな進展があった。 超楕円と楕円との間に関係をもつクラスが存在することは、Weil decent理論による[S. D. Galbraith and N.P.Smart."A cryptographic application of Weil descent" Proc.Cryptography and Coding, Springer LNCS 1746, pp 191-200. (1999)]. Weil descent理論は、楕円曲線の構造解析に利用される。楕円曲線から適当な超楕円曲線のヤコビ多様体への準同型を考える。この超楕円曲線の種数が、この準同型写像の扱い安さを反映することになる。このWeil descentは、楕円暗号に対する攻撃の手段としても、また超楕円暗号の設計といった積極的道具としても、利用できる。 最近では、超楕円暗号が楕円暗号よりも高速実装の可能性が指摘され、研究者の注目を浴びている[P.Gaudry and R. Harley, "Counting points on hyperelliptic curve over finite fields, "Proc.Algorithmic Number Theory -IV, Springer-LNCS 1838, 2000, pp. 313-332.]. Harleyらが、当初超楕円曲線(のヤコビ群)の位数計算に提案したアルゴリズムが、超楕円暗号の高速化に応用可能であり、注意深く解析すると楕円暗号よりも高速化が期待できるというものである。すでに、理論的計算効率では、このHarleyの超楕円アルゴリズム(の改良)が楕円暗号よりも高速である、という報告もある。 今後は、従来の楕円暗号の拡張を越えた超楕円固有の暗号理論が期待される。とくに、今回の研究では、実用性を考慮した展開研究という位置づけで行ったが、再び基礎理論の確立を主眼においた研究に戻る必要性がある。 これら、超楕円曲線暗号理論をはじめとする最近の研究動向を、邦訳書付録や数学雑誌に発表し、この方面の研究の啓蒙につくした。
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