研究概要 |
本研究の目的は、最新の情報・通信技術を駆使して独居高齢者の普段の生活状況や緊急事態を別居中の家族に通報することで双方の不安軽減を図るモニタリングシステムを構築することである。その手段として焦電型赤外線素子内蔵の行動検知センサを独居高齢者宅に設置し連続的に捉えた独居高齢者の生活状況に関する情報を情報集積装置に集め長期保存すると同時にインターネット用ブラウザで閲覧できる形式に変換して別居親族が自宅のモニタ装置で容易に参照できるようにする仕組みを完成させた。 本年度は最終年度であり,これまでの研究の締め括りとして総合テストを実施し,各機能の効果を検証し,その過程で様々な改良を施し完成度を高めた。その一つが行動検知センサの無線化である。昨年までは有線式の行動検知センサを独自仕様の専用LANに接続して用いていたが,配線作業に手間がかかるだけでなく設置場所にも多少の制約がある点が気になっていたが,センサと宅内装置の間を無線化することによって,その問題が払拭できた。また,長期計測結果に基づく各種統計的解析手法の実用性を高め,被験者の家族への緊急通報を自動発信する機能も完成させた。この機能は現在,試験的に運用しており,その信頼性を検証しただけでなく,より効果的な情報提示方法に関する研究も進めてきた。 さらに,昨年度から始めた被験者の運動量に関する研究も成果を挙げている。当初の狙いは独居高齢者の活動度を低下させる大きな要因である宅内転倒事故を早期発見するためであったが,瞬間的な事象検出の困難さが明らかになり,一方で,疾病等の早期発見に関する要望が高いことから,体調の長期変動を検出するためという方向に軌道修正した。本年度初めに試作した携帯型3軸加速度計は上記課題に対する一つの解であり,実用的かつ効果的なモニタリング手段の有力候補として期待できそうである。
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