研究課題
基盤研究(B)
原子力利用及び関連科学研究の発展のためには、高エネルギー中性子を高い効率で測定することが望まれる。液体メタン(沸点112K)は水素を含むので反跳陽子変換作用があり、さらに液体希ガスに近い性質があり液体電離箱としても動作することが期待される。液体メタンは反跳陽子変換器と陽子検出器の両方の機能があるので、大容量検出器として使用できる可能性がある。本研究では、液体メタンによる電離箱を製作し、その検出器の動作を実証することを目的とする。液体メタンを得るには加圧液体窒素を使用する方法もあるが、加圧時の容器強度確保の制限があり、温度保持時間を長くすることができない。本研究では、小型冷凍機を使用した液体メタン保持装置を製作した。これによって、数日以上にわたり長期間、温度100Kが達成できるようになった。液体メタン検出器では、液体中の電子のドリフトによって信号を得るために、信号が比較的遅いという特性がある。本研究では、世界で初めて、液体メタンに放射線が入射したときに液体メタンからシンチレーション光が発生することを確認した。これによって、液体メタン検出器そのものから、高速トリガー信号を得られることが分かった。液体メタン検出器を電離箱として動作させて電離信号を得るためには、電離電子の寿命を長くするために、液体メタン中の酸素等の不純物を低減させる必要がある。本研究では、脱、酸素材であるオキソープ等を使用してメタンガスを精製した。アルファ線源を使用して、電離箱からの電離信号を観測する実験を行った。液体メタンを精製後はアルファ線による電離信号がはっきりと確認できるようになった。これにより、液体メタン電離箱が、液体希ガス電離箱と同様に、入射放射線に対して電磁箱として動作することを実証した。したがって、中性子入射によって生じる反跳陽子を、電離信号として観測できる見通しが得られた。
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