本研究は海洋表層からの深層への有機物の鉛直輸送に大きな役割を占めると考えられるマリンスノー(肉眼で見ることが出来る有機物のアグリゲート)の沿岸、外洋におけるその数量、サイズ分布、およびその性状を解析するために、近年急速に技術が進展したデジタルカメラと画像解析技術を用いて、表層から3000mまでの微細なマリンスノーの鉛直構造を明らかにことが出来るマリンスノーカメラを作製することを目的とした。2年次目の本年は、市販のデジタルカメラと従来のフラッシュライトに比べると10%以下でほぼ同量の光量が得られる照明手法である白色のLCDランプを用いたプロトタイプのマリンスノーカメラを用いて沿岸および相模湾において現場実験を行った。その結果、白色のLCDランプはアクリル基盤に埋め込むだけで、3000mの水深に耐えることがまず判った。又このLCDランプを充分集積することにより従来型のフラッシュライト型の照明に匹敵する照度をある程度確保出来ることが判った。この方法では照明の方向によりマリンスノーの認識の精度が変化するため、最適な照明方向についても検討を加えた。さらに記憶装置を用いて最大250枚の画像を自動的に取り込み、それを船上で、簡単に船上の記憶装置に転送出来るシステムが可能になった。さらに、画像処理のソフトを用いることによりマリンスノーの形状やそのサイズ分布についても多量のデータを比較的短時間で処理できる目処がついた。このデジタルカメラはカラー画像であり、マリンスノーの性状についての情報量も大きいため、その現場海域での成果が期待できる。
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