ドリフトチューブ型イオン移動度計と四重極型質量分析計を組み合わせたイオン移動度/質量分析装置を開発し、生成後20-30msのイオンの全イオン移動度スペクトル、質量スペクトル、および選択イオン移動度スペクトルの測定を行った。質量スペクトルの測定結果から、正イオンではNH_4^+(H_2O)_nが主要なイオンであることが明らかとなった。またピリジンおよびジメチルアミンのイオンも検出された。そのほかにこれまでに組成が明らかになっていないイオン(135、149、152、279amu)も新たに検出された。これらのイオンの選択イオン移動度スペクトルの測定に成功し、全イオン移動度スペクトル中の最も移動度の大きなピークはNH_4^+(H_2O)_nによるものであることを確認することができた。また選択イオン移動度スペクトルはピークと連続部分から成り、スペクトルの形状とその反応時間による変化はドリフトチューブ内でのイオン-分子反応の情報を多く含んでいることが明らかとなった。負イオン質量スペクトルではNO_2^-(H_2O)_n、HCOO^-(H_2O)_n、COOHCOO^-(H_2O)_n、NO_3^-(H_2O)_nの4種類のイオンを検出した。これらの負イオン種を含む全イオン移動度スペクトルの分離は正イオンに較べて良好で、移動度スペクトル測定による濃度測定が正イオンの場合よりも実現しやすいことが明らかとなった。本研究の結果、移動度スペクトルでのピーク分離度の向上、多成分イオンを含む移動度スペクトルシミュレーションプログラムの開発など課題は残されているものの、濃度がppt〜ppbオーダーの大気微量成分の測定がイオン移動度法で十分可能であることを示すことができた。
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