研究概要 |
昨年度までの研究により、多種類の検査化合物を検討するためには、カスパーゼ3によるアポトーシスの検出方法が妥当であることを確認した。迅速かつ効率良く評価することが可能な96マイクロタイタープレートを用いた半自動システムを完成した。 ヒト白血病T細胞株のダイオキシンによるアポトーシス細胞内情報伝達系を検討した。免疫T細胞特異的に発現している、プロテイン・キナーゼC-theta(PKC-theta)が、アポトーシスに関与していることが予想されたので、PKC-thete特異的阻害剤で処理した細胞では、ダイオキシンによるアポトーシスをほぼ完全に阻止することが明らかとなった。そこで、PKC-thetaを活性化する1,2-diacylglycerol(DAG)の生成に関与するPhospholipase C-gamma(PKC-gamma)の関与を検討した。PLC-gammaの特異性阻害剤U73122で処理したL-MAT細胞を、ダイオキシンで処理すると、アポトーシスが顕著に抑えられることが明らかとなった。しかしながら、U73122単独投与でも、L-MAT細胞のアポトーシスが用量依存的に観察されることから、ダイオキシンからのシグナル伝達系と、U73122からのシグナル伝達系が、PLC-gammaを中心としてクロストークしているために、このような現象が観察されたものと考えられる。このことを利用して、ダイオキシンからPLC-gammaPLC-gammaの活性化に関与しているチロシンキナ-ゼを同定することにより、ダイオキシンの免疫毒性の機構を解明することができ、あたらしい評価システムの開発につながると思われる。
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