研究概要 |
赤潮プランクトン,ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマは,Iwasaki II培地で大量培養した。遠心分離によって集めたプランクトン藻体はトルエン-メタノール(1:1,v/v)で抽出した。得られた粗抽出物は,トルエン可溶部と水可溶部に分画した。水可溶部は,さらに酢酸エチルおよび1-ブタノール可溶性画分に分画した。毒性物質を微量かつ簡便に検出するため,カキの心臓およびエラの初期培養細胞を調製した。これら細胞に対する毒性活性を指標として,トルエン可溶部をシリカゲルカラムクロマトを用いて分画した。その結果,遊離脂肪酸とトリアシルグリセライドを主成分とする画分Aおよびカロテノイドを主成分とする画分Bに顕著な細胞毒性活性を見出した。 画分Aは遊離脂肪酸とトリアシルグリセライドを分離した後,それぞれの構成脂肪酸を比較した。両者ともパルミチン酸(C_<16:0>)が約24%含まれていた。しかしながら,遊離脂肪酸は,C_<22:6>(27.9%)が,トリアシルグリセライドはC_<18:2>(30.4%)が主成分であった。魚毒活性を示す赤潮プランクトンは,その脂溶性画分の50%以上を占める遊離脂肪酸が原因物質とされている。一方で,ヘテロカプサの遊離脂肪酸含量は脂溶性画分の4.7%であった。 画分Bに含まれる細胞毒性活性物質は,細胞毒性活性を指標として分画・精製した結果,5,8α-epidioxy-5α-cholest-6-en-3β-olと同定した。さらに,ヘテロカプサに含まれるステロール類の分析を行った。主成分は,dinosterol(C_<30>H_<52>O;39.5%)であった。さらに,7-dehydrocholesterolは9.4%含有していた。 現在,ヘテロカプサに含まれる生体内一重項酸素発生源の特定ならびに酢酸エチル可溶性画分と1-ブタノール可溶性画分の分画・精製を行なっている。
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