糖鎖固相合成においては、ポリマーの不均一性のためにポリマー上で反応が均一には進行しないことが問題であり、本年度はこの問題の解決に集中した。 未反応の受容体を含む混合物から目的の糖鎖のみを単離する方法として、ホスフィンを担持した固相樹脂を用いてアジド基を持つ化合物のみを釣り出す方法(Chemical Fishing法)を開発した。先に見出した4-アジド-3-クロロベンジル基を用いることにより、イミノホスホランを介して固相に結合させた化含物をDDQ酸化によって切り出すことができる。オリゴ糖エリシターの固相合成にこの方法を適用した。固相上で糖鎖を伸長させた後、糖鎖を切り出してChemical Fishingを行って保護五糖とした後、接触還元を行って目的のGlcβ1-3Glcβ1-3(Glcβ1-6)Glcβ1-3Glcの合成を完成した。 第二の解決策は反応性の高い部位を選択する方法である。昨年度は新規アルキニルメチルグリコシドリンカーを用い、薗頭反応により基質を固相に導入することで、固相上の反応性の高い場の選択が可能であることを見出した。このリンカーを切断すると1位が遊離となるので、切断後も1位を保護した形で単離ができるように、本年度はアルキンエステル型のリンカーを用いた.このリンカーはCo_2(CO)_8を作用させてアルキン-コバルト錯体を形成させた後にTFAを作用させるか、あるいはアルカリ加水分解によって切断される。プロパルギルエステルを有する糖受容体と4-ヨード安息香酸を導入しておいた固相担体との間で薗頭反応を行い、糖受容体を固相担体へ導入した。続いて種々の糖供与体を用いてグリコシル化を行い、二糖へと導いた。アルカリ条件下で処理することで切断し、目的の二糖を定量的に得た。二糖から三糖へのグリコシル化も定量的に進行することを見出した。
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