研究概要 |
ヒトゲノム解析がほぼ終了し、他の多くの生物種についても急速にゲノム解析が進行している現在、膨大なDNA配列から、効率よく遺伝子を同定し、その機能を明らかにする機能ゲノミクスが重要なテーマである。細胞に含まれる全てのタンパク質の発現、発現調節、機能、機能調節を明らかにするプロテオミクスは機能ゲノミクスの主要な柱である。そこでは質量分析を中心とした技術により大量の微量タンパク質試料のアミノ酸配列を高速に読みとる技術が必要である。平成12年度、Spring-8構内の理化学研究所播磨研究所内に、二次元ゲル電気泳動から質量分析計による測定、データベース検索までを自動で、かつ大量の試料を迅速に解析するファシリティを立ち上げた。13年度は、様々な生物種のプロテオーム解析を行うことでこのファシリティの評価を行い、大規模なプロテオミクス研究のための手段を探ることとした。(1)二次元ゲル電気泳動で分離可視化される1,000 2,000程度のタンパク質スポットを切出し、解析する手法と、(2)タンパク質試料を1次元のSDSゲル電気泳動で分離し、数十個のタンパク質の混合物を含むバンドを直接プロテアーゼ処理し、高速液体クロマトグラフィーと質量分析計を組合わせたLC/MS/MS法により解析する手法の両者を比較した。その結果、二次元ゲル電気泳動では、できるだけ高分解能の解析を行っても、スポット数は増加するが、同定できるタンパク質の数がそれ程増加せず、せいぜい300種類程度のタンパク質が同定できただけであった。一方、細胞破砕液を超遠心により、可溶性画分と膜画分に分け、後者をさらに疎水性に応じて3つの画分に再分画した試料を1次元のSDSゲル電気泳動により分離後LC/MS法により解析したときには、可溶性画分のみから約600種類、全体で、約1300種類のタンパク質を同定することが出来た。
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