研究概要 |
血管新生に作用する細胞増殖因子、FGF-2,VEGF, HGFとヘパラン硫酸との相互作用の性質が、これらの因子の活性発現に、さらに各因子の特異な活性制御に重要であるとの仮説のもとに、1)ヘパラン硫酸上の結合構造を同定し、各々異なること、ウロン酸2位とグルコサミン6位のO硫酸化反応が特異構造を決定していることを示した。2)これらの反応を触媒する硫酸転移酵素を均一精製し、さらにcDNAをクローニングし、4種類の異なる遺伝子産物であり、さらにアルタナティブスプライシング機構によるイソフォームを入れて、合計で5種類あることを示した。3)これらのレコンビナント酵素の基質特異性を検討して、それぞれに異なること、何れもがFGF-2,VEGF, HGFのヘパラン硫酸結合構造の合成に関与する可能性を示した。4)これらの酵素の発現や活性を細胞レベルで制御してヘパラン硫酸構造を特異的に撹乱する方法の確立を目指し、トラスフェクションによる酵素の過剰発現は期待したヘパラン硫酸構造の変化をもたらした。アンチセンスRNA発現や非活性酵素強制発現によるヘパラン硫酸硫酸化抑制の可能性を検討し、他のゴルジ体構成分子との局在の相違や相互作用などを考慮する必要が分かった。5)ヘパラン硫酸構造を撹乱した時、FGF-2,VEGF, HGFのシグナル伝達に異常が起こる可能性を、細胞レベルでHGFによるERKのリン酸化について検討した。さらに血管新生への影響の可能性について、ショウジョウバエの6-0-硫酸転移酵素発現抑制によりFGF-2シグナルと気管形態形成の異常を観察して確認した。6)血管新生in vitroモデル細胞培養系におけるレコンビナント酵素により合成した細胞増殖因子特異結合構造をもつヘパラン硫酸オリゴ糖の添加による阻害効果を観察し、仮説の妥当性を確認した。
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