研究概要 |
申請者らは,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する"β-ラクタム剤-感受性誘導薬"の作用機作を明らかにし新規の耐性メカニズムを遺伝子レベルで解明するとともに,MRSA感染症に対する有効な治療薬の開発研究を行うことを目的としている. 本研究では,まず,フラボン存在下に培養した高度耐性MRSAにおけるmecA発現量とPBP2'発現量の定量的関係の解明を試みた.フラボン存在下に培養した高度耐性MRSAにおけるmecA発現量とPBP2'発現量とについて,それぞれ,Northern Hybridization法を用いたmecAの転写物量,ならびにPBP2'断片ペプチドに対する抗体を用いたWestern BlottingによるPBP2'発現量の測定の結果,mecAのmRNAおよびPBP2'ともに発現量の低下が認められず,β-ラクタム剤-感受性誘導活性をもたらすフラボンの作用機構がmecAの転写制禦系とは無関係であること,そしてmecAとは異なるMRSAの高度耐性化に寄与する耐性遺伝子の関与が強く示唆された. つぎに,β-ラクタム剤-感受性化の程度が大きく異なるMRSA間で発現が誘導あるいは抑制される遺伝子の構造の決定を試みた.MRSA臨床分離株#5-10のゲノムDNAライブラリー(約2000個)を作製し,私たちが開発した新規のスクリーニング系を用いてDifferential Hybridization法により,フラボンの存在により通常と発現量の変化するクローンの検出を試みた.その結果,明らかに発現量に変化のある26個のクローンを確認し,そのうち6個のクローンについてシークエンスおよびホモロジー検索を行った.さらに,現在,残りの20クローンについて,解析を進めており,フラボンによるβ-ラクタム剤-感受性誘導活性の原因遺伝子が解明できるものと期待される.
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