研究概要 |
申請者らは,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する"β-ラクタム剤-感受性誘導薬"の作用機作を明らかにし新規の耐性メカニズムを遺伝子レベルで解明するとともに,MRSA感染症に対する有効な治療薬の開発研究を行うことを目的としている. 本研究では,まず,MRSA臨床分離株#5-10のゲノムDNAライブラリー(約2000個)を作製し,フラボン存在・非存在下で培養した菌の全RNAから作製した^<32>P標識cDNAを用いてDifferential Hybridizationを行い,二つの培養条件下で明らかに発現量に変化がある26個のクローンを確認し,シークエンスおよびホモロジー検索を行った.その結果,vraRとvraSがフラボン存在下に発現量を増大させていることを明らかにし,β-ラクタム剤-感受性誘導において,vraRとvraSを介するtwo-component signal transduction systemが主要な役割を演じていることを強く示唆した. つぎに,生薬から抽出したTA1101は,マウスに対する経口投与により,β-ラクタム剤高度耐性MRSA感染マウス(感染後1日で100%死亡)をβ-ラクタム剤との併用により100%治癒させることを見出した.さらに,この治癒効果は,マウスにMRSAを感染させる前にあらかじめ本剤を経口投与しても著効を示したことから,本剤は,MRSA感染症に対する画期的な治療薬となるだけでなく予防薬となることが期待される.
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