この基盤研究では我々がシアノバクテリアの概日時計の解析のために開発した生物発光によるリアルタイムモニターシステムの整備を主な目的とした。レポーター遺伝子による細胞内での遺伝子発現のモニターは非破壊的測定が可能であることから、通常の細胞固定を必要とする方法に比べ、はるかに時間分解能や感度に優れている。しかし、細胞内代謝に基づく発光を利用するため、多くの細胞代謝活性に影響され、定量的測定が難しい難点があった。そこでこの方法をより精度の高いものにするため、本年度の計画では2つの異なった波長の発光を起こす、鉄道虫のルシフェラーゼを利用することを計画した。このルシフェラーゼ遺伝子の供与をうけ、これをシアノバクテリアに導入するため、まず大腸菌由来のPtrcプロモーターに接続し、これをシアノバクテリアに導入すること試みた。このシアノバクテリアから2つの波長(赤色と緑色)の発光を確認することができたので、つぎはマルチクローニングサイトをもつプラスミッドを利用し、様々なプロモーターを導入できるコンストラクトの作成を行なった。その結果、生物時計のプロモーターや生物時計に支配される光合成の遺伝子のプロモーターなどによって、赤色と緑色のルシフェラーゼを駆動することに成功した。現在、赤色と緑色の生物発光を分別し測定し、定量化する測定システムの開発を行なっている。これに成功すれば、生物時計の研究のみでなく、多くの応用が可能となろう。
|