研究概要 |
平成13年度は、lacZ組換えアデノウイルスによる大脳皮質への感染効率を、正常マウス、リーラーマウス、ヨタリマウスを用いて研究し、その成果を部分的であるが発表することができた(Aoki et al., Neuroscience Research vol.41:13-23,2001)。ここでリーラーマウスはリーリンを欠損するミュータントマウスであり、ヨタリマウスはDab-1遺伝子を欠損するミュータントマウスである。ヨタリマウスの大脳皮質、小脳皮質、海馬の層構造は極めてリーラーマウスに類似する構造異常を呈する。正常マウス、ヨタリマウス、リーラーマウスの大脳皮質に組換えアデノウイルスを投与し、2日後に反対側に逆行性に感染する脳梁交連線維系(callosal commissure : CC)ニューロンをβガラクトシダーゼ組織化学により証明した。ヨタリのCCニューロンの分布は極めてリーラーマウスに類似するが、しかし統計的に検討すると両者の間には差があることが証明できた。以上よりリーラーとヨタリではフェノタイブが異なることが明らかとなった。本研究により、リーラーマウス、ヨタリマウス、正常マウスの大脳皮質に効率よく組換えアデノウイルスを感染させる方法論が確立し、また副次的にCCニューロンの分布がヨタリ、リーラーで大きく正常と異なり、かつリーラーとヨタリ間でも異なることが証明できた。 また幼若脳への遺伝子導入の実験を行い、組換えアデノウイルスを用いて効率よく大脳皮質および小脳皮質へ外来遺伝子を導入することを試みた。具体的には、胎生期の小脳皮質あるいは神経管にアデノウイルスを注入し、幼若小脳プルキンエ細胞や脳室上皮細胞へ外来遺伝子を導入することができた。
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