研究概要 |
1.研究目的 胚性幹細胞(ES細胞)は、いまや発生工学のみならず再生医学においても重要な研究資源となりつつあるが、その未分化状態を長期にわたって安定に維持することは、一部のマウスES細胞を除き、困難である。我々は、この問題を解決するために、ES細胞の未分化状態を維持する分子機構を解析し、転写因子Oct-3/4の発現量の重要性を確認しているが(Niwa,H..Et.,Nat.Genet.,in press)、本研究では、未分化状態維持に働く液性因子の解析からその存在が明らかになった未知のES細胞の分化抑制/増殖刺激因子(KSRS)を単離・同定して、ES細胞の無血清無フィーダー培養系を確立し、 (1)ES細胞を用いた発生工学技術の安定化と簡便化を図る。 (2)129系統以外の純系マウスからのES細胞の樹立・維持の効率を向上させる。 ことを目的とする。 2.研究成果 (1)既知のサイトカインや成長因子の効果の検討から、IL-4とIL-13がごく弱いながらもKSRS様活性を有することが明らかになった。 (2)発現ベクターpHPCAGGSを用いたES細胞cDNAライブラリーのプールをCOS細胞に導入し、この上清に含まれるKSRS活性をES細胞の無血清無フィーダー細胞培養系で検討したところ、42個の4000クローンからなるプールのうち、2プールに活性が認められた。 3.今後の方針 現在、活性の認められたプールを分割したサブプールを作成し、そのスクリーニングを進めており、平成12年度中の遺伝子同定を目指している。また、KSRS活性を示した2つのサイトカインが共通のレセプターに結合することから、ES細胞におけるこのレセプターおよびその下流のシグナル伝達分子群の発現の解析を行う予定である。
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