研究概要 |
生体の不均質構造を考慮した定量的な近赤外光組織酸素計測法の実現のために,以下の検討を行った. ・脂肪層による筋組織測定感度低下の補正法:前腕及び大腿を対象とした2種の実測とモンテカルロシミュレーションを行い,両者がよく一致することを確認した上で,シミュレーション結果から脂肪厚と測定感度の関係を表す実験式を求め,それを補正曲線として用いる補正法を考察した.あらかじめ脂肪厚を測定しておき,測定値に補正係数を乗ずる簡便な手法であるため,リアルタイムで脂肪層の影響補正が可能となった. ・ファントム実験による酸素濃度算出式の検討:各研究グループにより異なる酸素濃度算出式は,定量化において大きな問題点となってきているため,筋組織を模擬したファントム(Intralipid溶液に血液を希釈)を用いて理論的・実験的検討を行った.光拡散理論より酸素濃度算出式を導出し,その妥当性をファントム実験で検証した結果,血液による吸収係数変化が±25%以内であれば、理論式とよく適合(誤差±15%以内)することが示された. ・補正法を適用した定量計測法の妥当性の検証:装置は大型ではあるが優れた代謝計測法である磁気共鳴スペクトル法(MRS)を用いて,開発した補正法の有効性を検証した.被験者10名について阻血試験を行い,近赤外分光法とMRSにより前腕の筋酸素消費量を計測した.近赤外分光法の測定値に対して我々の開発した補正法を適用し脂肪層の影響補正を行うことにより,MRSの測定値と良い相関(r=0.75)が認められ(補正前:r=-0.26),本手法の有効性が確認された.
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