研究概要 |
生体の不均一構造を考慮した定量的な近赤外光組織酸素濃度計測法に関し,本年度は以下の成果を得た. 1.運動選手を対象とした筋代謝の評価 ノルディック複合ナショナルチームの選手(13名)を対象に高地トレーニング(2700m)の効果を近赤外組織酸素計測で評価し,運動負荷後の酸素濃度回復速度が高地トレーニング開始後,6日目で約16%,11日目で約20%上昇していることを見いだした.3名を除くと,血中ヘモグロビン濃度と酸素濃度回復速度が比較的よく相関しており,高地トレーニングによるヘモグロビン濃度の増加が回復速度の上昇に関与している可能性が示唆された. 2.筋組織酸素濃度画像化システムの開発と評価 当初の計画をさらに進展させ,200チャネルの受光系を有する組織酸素濃度画像化システムの試作を行った.大腿部にプローブを配置し,膝伸展・屈曲運動時の筋組織酸素濃度分布の画像化を試みたところ,伸展・屈曲運動に対応した筋の使い分けや運動後のhyperemiaを明瞭に画像化することができ,筋組織酸素濃度を時空間パターンとして捉える手法が筋代謝評価の有力な手段となり得ることを検証できた. 3.不均一構造を考慮した筋組織光学特性の決定 開発中の計測法の精度・誤差を検討するために,皮膚層や脂肪層の影響を考慮した筋組織光学特性の決定を試みた.ピコ秒パルスレーザとストリークカメラを用いた時間分解法およびモンテカルロシミュレーションにより,ヒト筋組織を対象に等価散乱係数と吸収係数を求めたところ,脂肪層の影響を考慮した場合としない場合では筋の等価散乱係数が大きく異なることを明らかにすることができた.
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