研究概要 |
我々は正常ラット肝臓非実質細胞分画に存在する増殖可能な幹様細胞を分離培養し、I型コラーゲンゲルを用いて培養するとこの細胞が成熟肝細胞へ分化することを報告した。本年度は、肝臓において種々の細胞外マトリックスを産生する星細胞が幹様細胞の分化に与える影響について検討した。 [方法]幹様細胞をラット肝臓由来の星細胞と共培養し、発現蛋白質の変化を蛍光免疫染色およびWestern blot解析により検討した。[結果と考察]幹様細胞は楕円形の核を持ち、核・細胞質比の高い小型の細胞であった。これらの細胞はα-fetoproteinを発現していたが、albumin,transferrin,cytokeratin 18,cytokeratin 19を発現していなかった。この細胞を星細胞と共培養すると、一部の細胞がalbuminを発現するようになり、成熟肝細胞へと分化したと思われた。この分化には星細胞が分泌する細胞外マトリックスを含む何らかの因子が影響を与えているものと思われた。 次に、正常機能を保持していると考えられる肝細胞をLECラット肝臓に移植し、細胞移植がウィルソン病の効果的な治療法と成り得るかを検討した。 [方法]LECラットの近交系ラットであるLEAラットから分離した肝細胞にアデノウイルスを用いてSV40 T-antigenを導入して不死化した。不死化した肝細胞(LEA35細胞)をLECラット肝臓へ移植(n=13)し、4週後に肝臓組織切片を作製し免疫染色を行った。[結果および考察]LEA35細胞をLECラットに移植したところ、4週後の生着率は69%(9/13)であり、移植細胞はアルブミンを発現していた。このうち44%(5/9)のラットでは移植後3週から血中ホロセルロプラスミンが検出できた。以上のことは、移植された細胞が機能し、肝臓内銅代謝が改善されたことを示唆している。
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