研究概要 |
ラット肝細胞を用いて,超遠心によりKupffer細胞を主体とする分画を単離し,培養した。この培養液中に気泡を含む超音波造影剤と遺伝子プラスミドを混じた溶液を還流し,造影剤が培養細胞と接触した際に超音波を照射することで,細胞内への遺伝子導入効率が上昇するかを検討した。 まずKupffer細胞の気泡貪食能を検討した。超音波造影剤は培養液中では浮遊するため,造影剤と細胞との接触機会を増加させるため,細胞培養液を還流させる特殊装置を用いた。還流液中にプラスミドを吸着させた微小気泡を入れ,培養液に還流させた後,顕鏡し気泡が細胞内に貪食されることを確認した。この予備実験より,次に培養液内に超音波照射装置を装着し諸種の条件下で超音波を照射して遺伝子導入効率を検討した。 遺伝子としてルシフェラーゼプラスミドを用いた。超音波照射にはElectrotherapy ZC2を用いた。超音波照射の条件設定として,duty比,照射音圧,周波数,照射時間を変化させた。微小気泡からなる超音波造影剤として,Optison,NC100100(Sonazoid),レポピスト,ソノビューを用いた。超音波照射による遺伝子導入効率は,超音波照射の照射条件と用いた超音波造影剤によって異なった。照射音圧が高いか,照射時間が長いと導入効率は上昇したが,音圧をMI値で1.0以上を20秒以上照射した場合には,逆に効率は低下した。これは照射による気泡の崩壊エネルギーが,細胞機能を障害する可能性を示唆した。至適条件下では,照射群はコントロール群に比べて,3-5倍の導入効率を示した。また造影剤の種類ではレポピストが最も低値であった。これは造影剤のShellの有無や内包する気体の種類に依存すると考えられ,今後検討する予定である。 in vitroにおける今回の実験結果により,本法の臨床応用への展望が得られた。
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