研究概要 |
まず,多光子蛍光顕微鏡用高速マイクロレンズアレイスキャナーの設計,開発を行った.本スキャナーでは,マイクロレンズは螺旋状に配置され,各レンズ間の距離を250μm,視野内の焦点数50点以上の場合,マイクロレンズアレイの回転速度5400rpmにおいて,1/1000秒の走査速度を実現できる.光源に用いる高強度短パルスレーザー光に耐えうる材料として,合成石英を選択し使用した.開発したスキャナー用い,再生増幅モードロックチタンサファイアレーザーを光源とした高速多光子蛍光顕微鏡を試作した.次に,試作した顕微鏡を用いて,ラット摘出心および培養細胞内のCa2+濃度の観察を行った.この実験では,蛍光指示薬Fluo-3AM(0.018mM)を細胞内に導入し,Tyrode液中において試料を観察した.Ca2+ウェーブとCa2+トランジエントとの相互作用によるCa2+ウェーブの消失,細胞内Ca2+濃度(1mM,2mM,3mMの順に変化)の上昇によるCa2+ウェーブの頻度の上昇,および細胞状態の変化(培養会誌10日目,11日目で比較)にともなう筋小包体のCa2+取り込み速度の変化の観察に成功した.また,再生増幅を用いないモードロックチタンサファイアレーザーを光源として用いた場合にも上記試料の観察を行い,高ピークレーザー光による励起時の蛍光の飽和現象が観察像に影響を与える(特に分解能,検出される蛍光強度)という知見を得た.
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