研究概要 |
本研究課題における主な方法論として、2cmまでの近接した微小距離2点間において測定した超音波ドプラ信号同士の直接復素相互相関処理を行うことにより、高精度の時間・速度分解能で脈汲の伝播時間を計測する局所脈波速度法を新たに考案した。次に、この方法の高精度化を図って、動脈硬化度のスクリーニングおよび治療の評価などに使用できるような、そしてまた内膜依存性血管拡張作動物質による急性及び慢性的影響を評価可能なような、研究用一体型装置を試作開発した。複数部位でドプラ信号を同時に得るための探触子および得られたドプラ信号間の相互相関係数演算部を有する超音波信号解析装置を試作し、局所脈波速度計測法の妥当性に関し検証した。健常例にて大動脈起始部、頚動脈,腹部大動脈、腸骨動脈などの従来の部位だけでなく,腎動脈や上腕動脈,膝窩動脈,足背動脈などでの局所脈波速度を計測した。これらの成績から、再現性、ばらつき度、操作性などに未だ難を残していることが確認され、試作装置システムの改良を継続した。 動物実験にてシステムの妥当性と制度の検証を重ねた。動脈硬化うさぎを用いて,局所脈波速度計測にあわせてNOの測定を行って内膜依存性血管拡張特性評価を行うべく基礎実験を行った。2点間距離を変えて行った局所脈派速度は、正常血管では長さに関わらず一定値をとり、動脈硬化血管では正常に比し高値であったが、硬化度の均質性によってばらつきが大きかった。acetylcholine (Ach)による血管拡張はL-NAMEによって抑制され、さらにL-arginineの追加により拡張性が再出現するが、動脈硬化うさぎでは脈派速度が速く拡張度の低下していることが示唆された。血管内膜拡張特性の評価法としての局所脈派速度計測法はその妥当性を明らかにし得たが、再現性・操作性に問題点を指摘でき、今後の課題と考えられた。
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