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2000 年度 実績報告書

トラウマと歴史-ホロコーストの記憶の精神分析学的解釈と歴史哲学

研究課題

研究課題/領域番号 11610003
研究機関東京大学

研究代表者

高橋 哲哉  東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (60171500)

キーワードトラウマ / 記憶 / 歴史哲学 / 否定論 / 記憶の責務
研究概要

三年間の研究の2年目である今年度は、ホロコーストのトラウマ記憶の精神分析に係わる論争のうち、特に、フランスに起こった「記憶の責務」(ドゥヴォワール・ド・メモワール)についての論争をめぐって考察を進めた。
フランスがヴィシー政権期にホロコーストに加担した社会的「記憶」は、歴史家アンリ・ルッソによって「ヴィシー・シンドローム」と名づけられたように、戦後フランス社会にとって、精神分析の対象になりうる「トラウマ記憶」となっている。この記憶と証言を抑圧し、否認しようとする言説が「否定論」(ネガショニスム)であり、これに対してその記憶の社会的継承の不可欠性を説くのが「記憶の責務」の言説であるが、近年フランスで起こった論争の特異性は、「記憶の責務」を説く加害者の側のフランス人(ジャン=フランソワ・フォルジュら)に対して、被害者側のユダヤ人(エンマ・シュニュールら)から批判が出ている点である。
両者の言説を詳細に分析した結果、対立は、「記憶の責務」の言説が紋切り型(クリシェ)となったことの問題点、ホロコーストという「倫理の崩壊」を示唆する出来事に「ヒューマニズム」の「倫理」を対置することの問題点など、多岐にわたるが、決定的な点として、「記憶の責務」を語りつづける限り、ユダヤ人が「永遠の受難者」となり、「喪の状態」に閉じ込められてしまうことへの被害者側の拒絶が作用している、という結論を得た。ジョルジュ・ベンスッサンのように、「シオニズムの勝利」を強調して「永遠の受難者」を拒否する場合も、類似の心的メカニズムが働いていると考えられる。
また、否定論的言説に共通する病理を、ドイツ型否定論と日本型否定論を比較分析することによって取り出した。

  • 研究成果

    (3件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (3件)

  • [文献書誌] 高橋哲哉: "トラウマと歴史-アブラハム・ボンバの沈黙について"越境する知2-語り : つむぎだす. 161-177 (2000)

  • [文献書誌] 高橋哲哉: "「記憶の義務」と現代史教育"21世紀の子どもたちに、アウシュヴィッツをいかに教えるか. 285-311 (2000)

  • [文献書誌] 高橋哲哉: "歴史/修正主義"岩波書店. 121 (2001)

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公開日: 2002-04-03   更新日: 2016-04-21  

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