研究概要 |
本年度は,本研究において,全体として計画された『エウデモス』『プロトレプティコス』『哲学について』等の初期アリストテレスの著作と見られるもののうち,『エウデモス』および『哲学について』を中心として,初期アリストテレスの思想の全体像を再構成するための基礎となる,個々の断片が表す思想の解明を第一とし,それに関連して,第二に,論証,論理に関する中期・後期著作の思想との比較のための基礎作業として,従来,最も研究の遅れていると思われる領域,すなわち,演繹推理(シュロギスモス)とも,帰納推理(エパゴーゲー)とも,区別される「アパゴーゲー」についての研究を行なった。 第一の研究成果としては,従来,断片として採用されている後代の証言は,必ずしも,想定されるような初期アリストテレスの思想の特徴を表していないことが明らかとなった.これは,「初期アリストテレスにおける「プシューケー」論」(『広島大学文学部紀要特輯号』58-1(1998),「Aristoteles De Philosophia Fr.13a Rossの問題--アリストテレス『哲学について』再考」(『広島大学文学部紀要』59(1999),pp.1-9),「アリストテレス『哲学について』(Fr.16 Ross)における「神」概念」(『西洋古典学研究』48(2000),pp.54-63)において報告される通りである. 第二の研究成果としては,アリストテレス『分析論前書』B25におけるアパゴーゲーについて」(『シンポジオン』44-2(1999),pp.13-23)において報告される通りである. なお,アル=キンディーのアラブ語文献による証言については,不十分ながらテクストを入手し,これを分析中である.(734字)
|