研究概要 |
本年度は,本研究において,全体として計画された,アリストテレス初期の著作断片である『エウデモス』『プロトレプティコス』『哲学について』等の,比較的まとまった分量を有する断片群に加えて,残存する分量の少ない断片群,および,これまでに収集し得たアル=キンディーによる文献をも考察の対象に加えて,初期アリストテレスの思想の全体像を再構成するための基礎となる,個々の断片が表す思想の解明を継続することを第一とし,その作業と関連して,第二に,昨年度までに行なった,アリストテレスの中期・後期著作(『コルプス(講義録・著作集)』)に表れた思想との比較のための基礎作業を継続するために,論証・論理に関する著作に次いで,ディアレクティケー(問答法)と『形而上学』における哲学史的記述の関連,さらに,ディアレクティケーに関して,中期・後期(『コルプス(講義録・著作集)』)のあり方と比較考察することによって,初期アリストテレスにおけるディアレクティケーのあり方を解明することを試みた.具体的な研究成果は,『シポジオン』(復刊第47号第2分冊2002年3月)所収の「初期アリストテレスにおける問答法とその周辺」,および,報告書において示される通りであるが,『コルプス(講義録・著作集)』に属する『トピカ』等におけるディアレクティケー(問答法)が,プラトンとは異なって,アリストテレスに独自なものとなるのは,アリストテレスがイデア論に対してどのような態度をとるかにかかっているという点は,例えば,イェーガーの問題設定が妥当するけれども,イェーガーの解釈に反して,初期アリストテレスにおいてすでに,ペイラ(吟味)とエレンコス(論駁)という機能に関しては,『コルプス(講義録・著作集)』と同様のディアレクティケー(問答法)を見て取ることができることが明らかになった.(770字)
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