l現代英米の道徳的実在論の代表的見解である「道徳的感受性」mora1sensibilityを通して道徳、価値を捉えようとする立場、すなわちウィギンスやマクダウエルの見解を検討した。 2 また、道徳的反実在論を取るブラックバーン等の論点を、その反映説projection theoryを中心に吟味し、実在論と反実在論とを分かつ論点がどこにあるのかを明らかにしようとした。 3 他方において、同時に18世紀のイギリスの道徳理論の代表者としてD・ヒュームを取り上げ、その主著『人性論』第2巻「情念論」と第3巻「道徳論」のうちから、ヒユームの基本的の概念を考察した。すなわち、ヒユームの有名な「理性は情念の奴隷である」という命題、ならびに「道徳判断は行為を導く」という命題における「理性」「道徳(判断)」「行為」の概念が正確にはどのように規定できるかを検討した。 4 現代の実在論者ウィギンスと反実在論者ブラックバーンはヒューム解釈において異なっており、特にヒユームの「モラル・センス」とカントの定言的命法を比較したウィギンスの考察は重要である。現在、カントとヒュームの道徳理論を比較したいくつかの著書、論文が出ており、それらを検討することによってヒユームの「モラル・センス」を解明しようとしている。
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