研究概要 |
当初の研究計画にしたがい,フレーゲを中心に展開された心理主義批判の内実を整理するためにおこなってきたロッツェやナトルプらによる心理主義批判について,より詳細なテキストの読解をすすめた.また,こうした議論の歴史的な意味を明らかにするため,特に19世紀末のヨーロッパにおける「心理学」をめぐる歴史的な動きに関して,資料による調査研究をおこなった.こうした研究によって明らかになった時代背景を前提として,フレーゲおよびフッサールの心理主義批判について詳細な検討をおこなうとともに,心理主義批判をめぐる両者の歴史的な関係を考察し,その議論の内容を比較検討した.これによって,19世紀末から20世紀初頭にかけてドイツを中心に展開された心理主義をめぐる議論が明らかとなるとともに,フレーゲとフッサールの心理主義批判の意味が従来以上に明確となった.これらの研究成果は,論文「フッサールの心理主義批判」および「フレーゲの心理主義批判」として発表した. さらに,以上の考察の対象となった19世紀末の「心理主義」を今日の認知科学の知見と比較検討し,その本質的な相違を明らかにするとともに,認知科学がいかなるかたちで心理主義的な要素を内包しているのかを整理するための研究をおこなった.その成果については,近日中に学会誌に発表する予定である.
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