研究概要 |
昨年に引き続き、有機体論の問題を追跡した。新しい進展は、第1に、現在追跡しているシェリング派自然哲学者のエッシェンマイヤーについては昨年のエッシェンマイヤー論を継承しつつ、「シェリングとエッシェンマイヤー」として紀要に連載を開始したことである。これに加えて、第2に、昨年のレシュラウプ文献の分析から、彼の「刺激反応理論」の展開として、研究発表という形式でNosologieの問題に言及し、さらにJaterieまで視野に入れて議論することができた。これはいずれ論文として発表することができるだろう。そして、これらの研究の成果として現在追跡している課題の着陸点がほぼ確認できてきている。すなわち、ブラウン説論争は、シェリング派内部では、シェリングの1806年の「自然哲学の見地から見た医学の暫定的目標」における総括で終わると同時に対外的には、近代医学の祖として有名であるが日本ではほとんど研究されていないフーフェラントとレシュラウプの論争で終わるということである。したがって、最終的にこの論争をフォローすることによって、「有機体論」の課題は終えることができるだろう。 このような見通しが立った点で、自然哲学そのものの基礎づけとして、論理的、科学史的な議論も視野に入れ始めた。今年は研究発表という形式で「化学過程論」をヘーゲルに即して行ったが、これは、ヘーゲルの「無限性論」の問題ともかかわるのでそれを視野に入れて行くつもりである。 なお今年はフーフェラントを中心に資料を集め,その他収集の欠を補うことにしたい。
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