本研究は、後期中世哲学における「存在」esseの意味を、現代の分析哲学の解釈およびそれに触発された古代哲学における「存在」einai概念の見なおしという文脈の中で再検討しようとするものである。まず「存在のアナロギア論」と「存在の一義性」とを、当時の新しい言語理論としての「様態理論」との関係において解明し、さらにそれを現代の分析哲学系の存在の意味論的解釈に照らして再検討した。具体的には、トマス・アクィナスとガンのヘンリクスの「存在のアナロギア論」、およびそれとの対決において形成されたドゥンス・スコトゥスの「存在の一義性」について、様態理論の観点からテクストに基づいて考察した。 今年度の研究実績は以下の通りである。 1.国内では上智大学中世思想研究所、東北大学文学部、外国では英国ロンドン大学ウォーバーグ研究所、ケンブリッジ大学図書館、フランス・パリ第4大学哲学研究所において、中世の言語哲学関連の未収集文献を集めた。 2.上記の文献を読解し、そのポイントを邦訳して、コンピュータに入力しデータベース化した。 3.国内や外国の研究協力者(上智大学中世思想研究所および東北大学文学部哲学科のスタッフ、ケンブリッジ大学J.マレンボン博士)とのディスカッションを通じて、研究課題の深化を図った。 4.中世記号(意味)論に関する論文を書き、中世哲学の概説書を編集した。
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