北宋以来の程学の展開として、南宋の乾道・淳熙年間頃に南宋各地で朱熹、呂祖謙、陸氏兄弟、胡氏湖南学、事功の学等の各士大夫思想が鼎立し、交渉しあう。南宋中期におけるその士大夫思想交渉の現場の復元を試みるというのが、本研究の目的である。 本年度の研究遂行状況は、以下の通りである。 1.南宋各地で士大夫思想が鼎立する前提を確認すべく二程初伝門人高弟に焦点をあわせて二程の語録資料の伝承を検討した研究の後編を発表した。 2.朱熹文集を例としつつ、思想交流の現場を伝えるものとしての書簡資料の価値について、モントリオールで開かれた第36回国際アジア・北アフリカ研究会議(ICANAS2000)の中で開いた宋代史研究会グループのパネルで報告した。本科学研研究費によって昨年度購入した携帯パソコン、及び本年度購入した携帯プリンターが威力を発揮した。 3.朱熹を事例とし、中心的士大夫思想家の思想受容の様態を思想の受容者側に焦点をあわせ、その人々の地域的拡がりや社会階層性などを検討した論文を発表した(印刷中)。 4.検索版『四庫全書』CD-ROMが本研究にとってきわめて有力な研究工具となることを熟慮し、価格が下がるのを待ってその検索ソフト部分及び専用写真版『四庫全書』の一部を購入した。 次年度最終年度は、上記の工具及び資料を活用することにより、各士大夫思想中心思想家の思想の受容者、門人層の思想受容に関わる諸問題の検討を深める予定である。
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