北宋以来の程学の展開として、南宋の乾道・淳煕年間頃に南宋各地で朱熹、呂祖謙、陸氏兄弟、胡氏湖南学、事功の学等の各士大夫思想が鼎立し、交渉しあう。南宋中期におけるその士大夫思想交渉の現場の復元を試みるというのが、本研究の目的である。 本年度の研究遂行状況は、以下の通りである。 1.検索版『四庫全書』CD-ROMが本研究にとってきわめて有力な研究工具となることを熟慮し、前年度に一部購入したその検索ソフト及び専用写真版『四庫全書』の残りの部分を購入した。 2.上記の工具を活用することにより、各士大夫思想中心思想家の思想の受容者、門人層の思想受容に関わる諸問題の検討を進めた。 3.その一部として、南宋半ばに各地で程学、道学系儒学を唱えた人士を科挙の場において結びつけた呂祖謙の呂氏の学の展開について検討し、呂祖謙の死後に呂氏の学の中心者となったその弟呂祖倹に焦点を合わせて、呂祖謙死後の呂氏の学と朱熹との交渉をテーマとした論文を発表した。 4.3年にわたる本研究で公表した論文をまとめて報告書を作成した。 5.本研究で公表した論文を、関連する旧科研費研究「朱熹門人集団形成の基礎的研究」(平成3・4年度)の成果と併せて編集し、『朱熹門人集団形成の研究』として刊行した。 上記2の検討成果の発表は本最終年度までには一部にとどまったが、今後も引き続き整理していく所存である。
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