本研究は、楊度(1874〜1932)の思想的変遷を解明し、所謂思想的「変節」や「転向」が個人において如何なる事態を引き起こすことになるのか、そのようにして得られる実残的「正義」が、個人的にも、社会的にも、如何なる意義を持ち得るのかという視点に立って、対話や合意によって共通の実践的価値である文脈的正義を獲得するという今日の哲学思想状況における最前線の課題に取り組むことを目的としている。 本年度当初、本研究は、前年に蒐集できなかった楊度の経歴に関する資料の調査・蒐集を行う。この為、東京・京都等への出張を行う。さらに北京大学他への出張を行い、中国の研究者と直接交流し、現地研究者との情報交換を行う。蒐集資料の読解を通じて、楊度の思想遍歴に関して具体的にその内容を整理する。以上のことを、年度課題として設定した。 先ず、前年に蒐集できなかった楊度の経歴に関する資料については、数度の東京出張において、重要な中国語文献を見つけることが出来た。しかし、北京大学へ出張を行い、中国研究者と直接の情報交換を行うことについては、当方の事情で調整が成立せず、従ってさらに次年度に延期して行うことにした。 楊度の思想遍歴に関して具体的にその内容を整理することについては、資料の発見に手間取ったため十分に果たすことは出来なかった。これについては次年度の最重点課題として、果たして行きたい。
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