研究初年度にあたる本年は、研究計画にそって以下の基礎的作業を行った。 1.Mok sadharma章の解読作業 基礎的作業としての解読は、今日までに第252章まで粗い訳を施し、第221章の前半までは活字化した。しかし、章によっては改変や付加などによる毀損が著しく、十分に解読されたとは言えない章も残っている。(第201、202章はその顕著な例である。)Moksadharmaの文体やEpic独自の表現については、すでにGondaやMeenakshiの研究があり、参照することができたが、Moksadharmaの独特の性質-Epicの一部であるとともに体系以前の哲学的教説を含んでいるという性質-を考慮すると、十分解明されているとは言えないようである。あちこちに散見される難解な詩節も、もう一度、Epicの一部であることから受ける韻律的制約や省略的表現が慣用的に用いられていた可能性を念頭において、検討しなければならない必要を痛感している。また動詞の用法についても、一つ一つの用例に注意を払っているが、現在は、どのような点に焦点をあてれば、各章の特徴を浮かび上がらせることができるか暗中模索の状態である。 2.関係資料の収集、情報収集 文献については、仏教・ジャイナ教の基本的資料を収集することに主眼をおいた。しかし、ジャイナ教関連の文献は、近年絶版の書籍が多く、必ずしも十分収集できたとは言えない。今後は、コピーなどによって基本的なテキストは収集しておく必要を感じている。また今年度は、古典インドに関係する学会に参加することができ、国内外の研究者と直接的な情報交換の機会をもつことができたのは有益だった。
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