研究概要 |
研究最終年度である本年度は、研究計画に沿って以下の作業を行った。 1.Moksadharmaの解読作業は、最終章まで終わらなかった。残った30章は近いうちに解読を終了したい。翻訳を活字化することも本年度はできなかったが、これも継続していくつもりである。 2.本年度は、成果の一部を論文として発表することに多くの時間を費やした。本年度作成し寄稿した論文は、以下のとおりである。 (1)Bhutatman Reconsidered:多義的に用いられるBhutatmanのMoksadharmaに見られる用例を分類整理し、意味の変遷について考察した。(立川武蔵教授還暦記念論集(名古屋)に掲載予定) (2)Asita Devala、A Samkhya Teacher : Samkhya初期の論師とされるAsita Devalaの所説を検討し、Samkhya前史におけるAsita Devalaの位置について考察し、仮説を提示した。(IIalbfass教授追悼論集(Wien)に掲載予定) (3)Parasara仙の教説:Moksadharma279-286章に見られるParasaraに帰せられる教説を、varnaの義務という観点から整理紹介し、Parasaraの意図について考察した。(北條賢三教授古稀記念論集(東京)に掲載予定) 3.Samkhya学派の基本的タームのMoksadhamrmaでの用例を動詞との関連で整理分類することを試みた。用例数が膨大なため、どのような観点から整理すれば傾向が明らかになるか難しい問題であり、試行錯誤を経て今回の方法に至ったが、必ずしも満足できるものではない。今回は、名詞の格変化と動詞語根と組み合わせて分類を試みた。報告書では、Samkhya学派の認める心理器官(buddhi, manas、ahamkara)の用例を分類して提示した。これによって、これらの語のもつニュアンスや親近性のある動詞の傾向が見て取れると思う。 4.動詞の用法については、Veda語に比較し一定の法則ないし傾向を見出すのは難しい。全体の用例数も多く、まだ整理の段階にとどまっている。 5.資料収集については、これまでに集めることのできなかった基本資料(Jatakaなど)の補充に努めた。この4年間で、かなりの量の基本資料を手元に置くことができたのは幸甚であった。また、情報収集に関し、昨年同様インド関係の学会に参加することができ、多くの研究者と出会う機会が持てたのは有益であった。
|