研究課題「癒しの思想と人体観-呼吸を手掛かりとして」を達成するために、宗教学分野と医学分野における資料の収集と分析、および実地調査に従事した。具体的には、『教育の基礎としての一般人間学』『病気と治療』などのR・シュタイナー関係の図書や、『黄帝内経素問』『抱朴子』などの東洋医学関係の図書を含む必要な諸文献を揃えて、その解読と解釈の作業に着手するとともに、国の内外の「癒し」関連の施設の実地調査を行った。特に、8月下旬に訪問した連合王国のフィンドホーン・ファウンデーションにおける実習体験と聞き取り調査を通して、ニューエイジ共同体のメンバーによる活動(ワークショップ、ガーデニングなど)の現状を詳細に知ることができ、彼らの活動の根底を支えている「癒し」の思想に触れることができた。また、以上の文献解読や実地調査と並行して、呼吸を利用したピース・ブリージング(平和呼吸法)などの健康法や宗教的行法を研究の一環として実践しながら、本研究課題が現実の具体的生活に根ざした仕方で遂行されうることを事実に即して確認してきた。 今後の研究計画については、「癒し」の思想や意味を特に呼吸や人体観との関連の中で考察することを通して、人間の存在構造を問う視点から宗教学的精神科学的知見と医学的自然科学的知識との統合化を試み、併せて本研究の成果を公表するための作業にも取りかかる予定である。
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