研究概要 |
本研究は、世紀転換期を迎え、近代宗教学・宗教社会学の見直しの声が国際的に高まる今日の状況下で、前世紀末の日本およびドイツにおける宗教状況と宗教研究の相関を解明するとともに,そこから宗教研究のアクチュアルな課題への示唆を得ることを目的とするものであった。 本研究では、まず日本の世紀転換期における宗教学と宗教状況、さらには政治・文化的時代状況との関連を、日本の宗教学の創始者である姉崎正治の生涯と業績の検討において明らかにした。姉崎の宗教研究は、単に日本における経験的宗教学の端緒をなしただけではなく、さまざまなかたちで時代の状況に規範的に介入するものであり、その意味で宗教学の文化的機能を知る上で示唆に富む事例であった。その成果の一部は2000年8月に南アフリカで行われた国際宗教史学会において発表したが、研究の中核となる部分は、2002年春に、『姉崎正治と日本近代』と題する共著として刊行される予定である。 本研究の第二の中心をなすのは、ドイツにおける宗教社会学のやはり創始者であるゲオルク・ジンメルの宗教学説の検討であった。ジンメルもまた、近代性一般と同時代の宗教状況へのアンビヴァレントな関わりのなかで、その(宗教)社会学と生の哲学の形成を行ったことが確認された。この点は特に論文「心理(学)主義」的宗教理解の帰趨」において論じた。 さらに当初の研究計画にはかならずしも字義通りにはうたわれていなかったが、前世紀末と今世紀末における宗教状況と宗教研究・宗教思想との並行性と差異性という問題が研究の過程で浮上してきた。これについては「『ポスト近代的宗教性』の条件?」および「伴走する影--対抗科学と『霊性』探究の夢」において扱うこととなった。
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