南アフリカ共和国のキリスト教の現状についての調査と、オランダ系南アフリカ人(アフリカーナー)によるアパルトヘイト正当化のキリスト教に関する資料収集のために、3週間にわたって、テレンボッシュ大学神学部で調査を行った。アパルトヘイトを正当化してきた教派であるオランダ改革派教会は、アパルトヘイト時代の教派の在り方について自己批判しているが、多文化主義を掲げる新生南アフリカにとって、キリスト教が社会統合・国家統合のための役割を果たせるかどうかは、いまのところ不明である。 同じ多民族国家であり、カルヴィニズムの流れに立つキリスト教を国家統合のための「見えざる国教」(civil religion)としてきたアメリカ合衆国と比較し、なぜアメリカでは自国の在り方に対する批判が、宗教の側から出てきたのに、南アフリカの場合は出てこなかったのかについての分析を行なった。主なる相違は、啓蒙主義に対するスタンスと、共和制についての理解にあることが判明した。 多様性を認めつつ、国家統合を図ろうとする南アフリカにとって、今後、宗教がどのような役割を果せるのについての研究を、今後の課題としたい。
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