今年度の研究は、当初の研究目的のうち、第2番目の目的(コミュニケーションの次元での現実世界と仮想世界との比較)と第3番目の目的(モラルに関する教育の次元での現実世界と仮想世界との比較)を重点的に追求することにあった。 研究代表者は、これらの目的を、前年度と同様、「情報モラル」の教育という場面で考察した。現在、全国の中等教育の現場で、情報モラル教育のプログラム化が進められているが、そこには本研究と密接に関わる諸課題が山積しているからである。そのため、今年度はCEC(コンピュータ教育開発センター)の調査研究とも連携して、いわゆる「情報化の影」の問題などの解明に努めた。その成果は、文部省や各地の教育センターでの教育情報化の講座などに直接活用されたほか、論文としては、ダートマス大学(アメリカ)で開催されたCEPE2000("Information Ethics and Humanity"のタイトルで発表)などで報告された。また2001年2月には「情報倫理の教育」をめぐる国際フォーラム(「情報倫理の構築プロジェクト」主催による)のオーガナイザーを務め、国外から参加した8名の先端的研究者とともに「情報倫理教育のあるべき姿」を討議した。このフォーラムでは、コンピュータ・エシックスにおけるモラルが、伝統的倫理学の知見を必要としていること、そして現段階においては、モラルの原理的研究以上に、モラルの教育的研究がきわめて重要であること、などが各国共通の課題として明らかにされた。 このように今年度の研究は、きわめて実り多い成果をもたらした。
|