本年度は最終年度であり、取りまとめのために、すでに発表した論文「X線画像とからだ」をより広い連関のもとに置き、なおかつより立ち入った考察を加えることを主眼として研究を行った。 具体的には以下の通りである。 X線画像よりも以前の、人間のからだの画像、特に西洋近代にとって、近代医学にとって、なおかつ現在のほぼすべての世界の人間にとって強い決定力をもっている、ヴェサリウス以来の人体解剖図を調査検討した。 自然科学の一部門としての生物学と医学医療との連携は、19世紀ごろにはじまったと考えてよいが、そうした19世紀の医学医療について、コレラなどの具体的な疾病を事例に採用して、専門家集団としての医学者の対応や態度、さらには一般の人々の対応や態度を調査検討し、その絡み合いを確認した。 将来的な研究の進展を念頭に置きながら、からだ・身体の現在という要素を排除や度外視しない自然科学的な知識のあり方の可能性をさぐった。このさい、認知科学の研究やコンピュータ技術における現象学的身体論のアプローチを参照枠とした。
|