研究課題
本研究については、まず研究分担者間で物語概念に対する理解の程度にかなりの差があり、地域的には西洋・東洋、時代的にも古典から現代にまでまたがるそれぞれの分野に引き付けて、どのような事柄を共通の土俵に乗せられるかが大変気がかりな点であった。したがって初年度は「物語」に関する論考としてすでにある一定の評価を得た文献を共通に読んで、話し合うことから事が始まった。基本的な図書としてはマッキンタイア『美徳なき時代』 ダント『物語としての歴史』 バルト『物語の構造分析』 野家哲一『物語の哲学』などである。またそれらの哲学書が登場してくる哲学史的背景について学習したが、これらの情報の提供については分担者の一人蔵田氏に負うところ大であった。そうした共通土台を形成することと平行して2ヶ月に一度程度開催する持ち回りのコロキウムで、分担者が大まかな見通しについて語り、グループメンバーからコメントを受けた。現象学に関係する分野は比較的イメージ形成が容易であるように思われたが、東洋哲学からの物語の切り口はおそらくは西洋とまったく違った経過をもっているようであるが、しかし物語概念はしっかりと根を張っているようである。これとは別に研究代表者の小川は2月に海外出張を行い、19世紀の生物学史の文献から関係するものの収集にあたった。学外からの講師を招く件については、ダントの訳者と交渉を進めてきたが講師の都合で、実現の運びにはならなかった。この点については次年度にぜひとも実現したいと考えている。
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