研究課題
本年度については西洋と東洋の哲学思想の研究者を招いて、それぞれのご専門における物語思想を展開していただき、大変有意義であった。最初は東北大学の野家啓一氏に8月4日に「物語としての思想」と題してご講演いただいた。『物語の哲学』の著者としてこの分野のいわば先駆者である講演者には「物語り行為論の背景」「物語り論の基本構図」「歴史の物語り論」「科学の物語り論」の4点を柱にかなり本研究テーマにそった話題提供をしていただくことができた。東洋、西洋いずれの研究者にもそれぞれ接点を見いだすことができ、科学の物語り論は特に新鮮であった。2回目の講演会は東方研究会所属の田辺和子先生を新年1月12日にお招きし「原始仏教聖典の中の物語」と題してご講演いただいた。仏教聖典全般に関わるお話もさることながら、お話の中心は過去世物語の具体的な個々の解説、共通に見られる顕著な特徴などにあった。過去世物語は重要な教理、教説を説くに当たって比喩として語られることが多く、難しい思想を万人にわかりやすく解説し伝達・伝播をはかるのに物語が重要な役目を担ったことがよくわかった。パーリ聖典の物語でありながら、イソップ物語や日本昔話によく似たストーリーもあって東西の思想研究者にとって大変興味深いものであった。
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