研究課題/領域番号 |
11610043
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上野 成利 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (10252511)
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研究分担者 |
森本 淳生 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (90283671)
安田 敏朗 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (80283670)
小林 博行 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (00293952)
細見 和之 大阪府立大学, 総合科学部, 講師 (90238759)
崎山 政毅 神戸市外国語大学, 外国語学部, 助教授 (80252500)
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キーワード | 危機 / 脱-近代 / 近代の超克 / 戦間期 / 1930年代 |
研究概要 |
1 今年度の研究会で取り上げたのは、中井正一の複製芸術論、加藤正・尾崎秀実のマルクス主義、日本浪曼派のイロニー論、橘孝三郎の農本主義、清水幾太郎の社会学思想などである。前年度までに検討を加えた哲学(京都学派)、言語学(時枝誠記)、文学(小林秀雄)、政治学(南原繁)、経済学(島恭彦)、民俗学(柳田国男)、民芸論(柳宗悦)などの分野を合わせると、1930〜40年代の日本の知識社会の全体像を一通り見渡すことができたといえよう。 2 こうした作業をつうじて改めて確認できたのは、近代みずからが自己自身のありようを否認するという、近代の屈折した自己意識のありようである。たとえば京都学派の言説では、紛れもなく「近代国家]であるはずの日本がいつのまにか「ポスト近代国家」の資格を与えられ、それによってアジアにたいする帝国主義的侵略が正当化されてゆく。自己の「近代性」に目をつぶり「ポスト近代性」へと一挙に駆け上がってゆくわけである。 3 しかもこうした「飛躍」は京都学派に固有のことがらではない。小林秀雄や日本浪曼派ら文学者たちにしても、あるいはリベラルと目される社会科学者たちにしても、多かれ少なかれ事情は同じだというべきだろう。要するに、「近代」によって失われた「本来的なるもの」を仮構しつつ、しかもそれを直接取り戻すこともできないがゆえに、それを想像的に埋め合わせるようなかたちで「脱=近代」の言説が紡がれていったのである。 4 今年度は、戦時期日本のテクストに焦点を絞り、検討作業を積み重ねてきた。目下のところ、たとえば日本浪曼派にとってのドイツ・ロマン派、京都学派にとってのドイツ観念論といったように、これらのテクストのヨーロッパ思想との交渉の動態を跡づけながら、20世紀前半期の「危機」と「脱=近代」の言説を総合的に研究するという当初の課題に即したかたちで、共同研究報告書の作成を進めている。
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